マダムNの神秘主義的エッセー

神秘主義的なエッセーをセレクトしました。

48 失われたと思っていた中国五千年の芳香

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出典:Pixabay

たまたま出合った動画だった。

「夢醒」という中国語のタイトルの歌で、ソロ歌手のお名前は姜敏とおっしゃるようだ。

何かなつかしいとしかいいようのない情感でいっぱいになり、涙がとまらなくなった。

後で家族に聴かせてみると、へえー綺麗な声だね、と感心したが、わたしほど感動した様子はなかったので、神秘主義的感性も影響しているのかもしれない。

わたしは前世とあの世の記憶の小さな断片を抱きしめて生まれてきたが、普段は日常生活にまぎれてしまっているそのことを思い出し、落涙したというわけだった。

多彩な色遣いと歌詞から道教と関係があるように思えた。

中国語は全然わからないし、英語力も乏しいので、間違っているかもしれないが、この歌は輪廻する人間の性と人生の浮き沈み、さらにわたしたちの試練には理由があることを語り、道を獲得すれば、輪廻がもたらす夢から覚めることができるということを教えているのではないかと思う。

拙著『卑弥呼をめぐる私的考察』*1で、カトリーヌ・デスプ(門田 眞知子訳)『女のタオイスム ――中国女性道教史』(人文書院、1996)に出てくる著名な女性道士、孫不二[そんふじ](1119 - 1182)の詩を紹介した。孫不二が生きた中国は宋の時代、日本ではそのころ平安時代である。
歌を聴きながら、孫不二の2編の詩を連想したので、ここでも紹介しておきたい。

次の詩は死ぬ直前に作られたもので、彼女は自らの死を予告し、詩を吟じ、蓮華座に座り、時刻を尋ね、逝った。太陽は丁度、天頂点で輝いていたという。

衣服を着替え、私は嬰児のように拳を握り締めて待っている。
その間、火と水は正確なリズムで結合する。
無数の紫色の光線が大海の底から生じ、
一挙に三つの関門を透過する。

不滅の音楽の絶え間ない音にからまれ、
私は、神々の酒[アンブロシア]の醍醐味を絶えず味わう。
ベールが至高の万能薬[シュブリーム・パナセ]の上で引き裂かれ、
この万能薬は九度変化してのち、金丹に醸成された。*2

もう一篇は、天上界への上昇を謳った詩である。

吉日にあなたは谷を出、
神々しい雲の中を昇って行く。
そこでは玉女たちが一組の青色の不死鳥を曳き、
金童が赤い桃[ペーシュ]を差し出す。
花畑の中で、装飾のある竪琴の音とともに、
あるいはまた、月明かりの中で瑪瑙[アガート]の横笛の音とともに、
ある朝、俗なる肉体を去り、
海の波間を安らかに渡りなさい。*3

今の中華人民共和国に、宋時代の道教を連想させるような宗教芸術が存在しているということに目映い衝撃を受けた。

中国大陸では多くの王朝が栄枯盛衰を繰り返し、多彩な文明を形成してきた。そうした中国から古来、日本は様々なことを教わってきて、本来は中国に対する畏敬の念があるはずであった。

しかし、中華人民共和国はそれら全てを破壊し、否定する怪物国家であるので、わたしはこの国に対しては暗い、絶望的な気持ちにしかなれず、シンパシーを感じるのは無理である。

共産党キリスト教の鬼子ともいわれるが、自らは宗教を否定しているため、宗教や文化の継承者としての側面をもたない。

だから、毛沢東王朝である中華人民共和国の歴史は浅い。1949年10月1日、中華人民共和国の建国を北京で宣言したその日からの歴史なのだ。65年の浅い歴史しかない。それも、しらべた限りにおいて、歴代王朝の中でも最悪の王朝といえると思う。

毛沢東王朝の中国を、わたしは中国とは呼びたくない。そう思ってきた。

それが、何という思いがけなさで、中国五千年の歴史が甦ったことか。

訳がわからなくなり、さらにしらべてみると、感動の涙も凍りつくような事情を知った。

南京事件の関係から、最初に視聴したのは、次の動画だった。

中国共産党の悪行を暴露した動画で、この動画には戒律や僧侶の服装を維持するよう主張したため、残酷に殺された、当時112歳だったという立派なお坊様が出てくる。

この動画の元となったのは、2000年5月、ニューヨークで設立された新聞およびインターネットを報道媒体としている多言語メディア「大紀元」が2004年11月18日に発表した「九評共産党共産党についての九つの論評)」という社説であるようだ。

そして、大紀元と「夢醒」を放送した新唐人電視台は法輪功系のメディアであるという。動画のステージは神韻芸術団によるもので、姜敏は神韻芸術団のソプラノ歌手だそうだ。

ウィキペディアには、「中国で弾圧された法輪功関係者らによって始められたため、現在も中国では公演を行うことが出来ない。法輪功系のメディアである大紀元と新唐人電視台では神韻についての報道を多く行っている」とあった。

184年の黄巾の乱は歴史で習ったが、中共をひっくり返す可能性があるのは道教系の組織しかないのかもしれない。中国五千年の歴史を生きる人々によってしか、中国の再生はないと感じる。

もっとも、法輪功は「道家」と(中国)『仏家』の思想を根底に併せ持つ先史文化に根ざした気功だそうで、迫害に対しては「忍」の姿勢が貫かれているようである。

一頃は、中国がニュースで映し出されるときなどに、朝の公園で大人数で太極拳をやっている風景が馴染みのものとなっていた。それは法輪功と関係があったようだ。今は法輪功に対する中国共産党の弾圧がひどいらしい。

法輪功についてウィキペディアから引用しておく。

法輪功(ファールンゴン、ピンイン:Fǎlún Gōng)とは、中国の伝統の気功である。
創始者は、李洪志。『法輪功』と書いて「ファールンゴン」と読む(発音する)。
1992年李洪志が伝え、中国古来からの佛家修煉法であり、真・善・忍に則って修煉するものである。簡単に言えば、真・善・忍で日常生活を指導し、人の道徳を向上させ、同時に5式の動作を通じて、体を鍛える気功である。

 

概説
創始者吉林省出身の李洪志。彼によると、法輪功とは「道家」と(中国)『仏家』の思想を根底に併せ持つ先史文化に根ざした気功であるという。そして、かつての太極拳と同様、基本となる気功動作の他に、内面の向上も重要とされている。内面の向上とは、宇宙の特性「真善忍」に基づいて、常に自分自身を厳しく律することで、徐々に心性を高めていくことを指す。その際、『転法輪』と呼ばれるインターネット上で無料公開されている指導書が必要となる。また、気功動作は第1~第5まであり、第1~第4は立った姿勢、第5は座った姿勢で行う。
また、法輪功に関しては、内面の向上に重点が置かれているため、他の多くの気功法同様、金銭や利益が絡む活動はいっさい許されていない。その為、現在は各地のボランティアの手によって、無償で気功動作の指導が行われている。
日本では2004年8月27日、「日本法輪大法学会」が東京都において特定非営利活動法人を取得。また、法輪功を学ぶ人たちの事は、一般的には「学習者」と呼ぶ。

 

中国政府による法輪功への虐殺と人権蹂躙
1992年以降、爆発的に増え続けた法輪功学習者の数を警戒した江沢民が、「中南海事件」を契機に、1999年7月20日、彼自身の名により、公に『邪教』であるとして、法輪功学習者への弾圧を開始したと各所から報じられた。このとき彼は「当時、7千万人以上に及んでいた国内の学習者らが結託し、中国共産党を支持する人数を上回る大規模なグループとして、なんらかの政治的関与を行うのではないかと一方的に憶測し、恐れた」と言われている。迫害の瞬間を捉えた画像や、国連や専門団体による調査書なども数多く存在している。しかし、これまでに中国共産党の迫害により死亡した人数が、3397人に達したとする専門家の調査結果も出るなど、2011年現在も情報が錯綜し続けているのが現状であり、国際連合の専門機関は中国政府に詳細な調査を行うよう、現在も要求し続けている。〔略〕
2003年の時点で法輪功修行者の投獄は数万人に及ぶとされ、2002年末までに約500人もの修行者が収容中に死亡したとされている。看守からスタンガンによる電撃と殴打を受ける等の虐待・拷問が多数報告されており、不審な獄中死も多い。法輪功修行者への具体的な拷問・虐待、受刑者の不審な死に関しては『現代中国拷問報告』に詳しく載っている。

 

臓器狩り
2006年3月に、非法輪功“学習者”の中国人2人がワシントンD.C.にて、『法輪功学習者に対する臓器摘出が中国で行われている』といった内容の告発がなされた。また、同時期に大紀元も「瀋陽市近郊の蘇家屯地区に、法輪功学習者を殺して、不法に臓器摘出行為を行う収容所がある」と報じている。その後、国際人権団体からの依頼を受けて、カナダの人権派弁護士デービッド・マタスと、カナダ国務省でアジア太平洋担当大臣を務めたデービッド・キルガーの二人からなる調査チームによって、詳しい調査が行われた。その結果、52種類の証拠に基づいて『法輪功という名の気功集団の学習者から臓器を摘出し、臓器移植に不正に利用している』という調査回答が入ってきたという。この調査内容は世界44カ国で発表が行われ、後に「血まみれの臓器狩り(Bloody Harvest, The killing of Falun Gong for their organs)」としてカナダで出版されている。*4

海外版はさらに詳しい。

英語版: Falun Gong - Wikipedia, the free encyclopedia

フランス語版: Falun Gong — Wikipédia

サイト「小名木善行 ねずさんの ひとりごと」の以下の記事では、なぜ法輪功がここまで弾圧されるのかが考察されている。

nezu621.blog7.fc2.com

最後に、日本新唐人テレビのチャンネルで公開されていた漢字の成り立ちを教えてくれる動画を一つ貼り付けておく。

日本でもこうした教育がなされたら、国語力がアップするだけでなく、いじめなどなくなるのにと思う。洗練された教育理念が感じられ、ほのぼのとしたムードに心が和む。

 

マダムNの覚書、2015年6月11日 (木) 20:00

*1:直塚 万季『卑弥呼をめぐる私的考察(Collected Essays, Volume 3)Kindle版、2014、ASIN: B00JFHMV38

*2:デスプ,門田訳,1996,p.106

*3:デスプ,門田訳,1996,p.260

*4:法輪功」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2016年4月24日 (日) 03:29 UTC、URL: ttp://ja.wikipedia.org(2016年4月29日アクセス)