マダムNの神秘主義的エッセー

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52 座右の書にふさわしいH・P・ブラヴァツキー『沈黙の声』

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出典:Pixabay

ブラヴァツキーが東洋の古典から英訳、解説した『沈黙の声(The Voice of the Silence)』は、神智学に関心のある人にもそうでない人にも感銘を与える本だと思うので、エッセー50「ウィリアム・ジェームズに対する疑義、神智学協会国際本部7代会長だったラーダ・バーニアのインド舞踊」で触れたが、改めて邦訳版を紹介しておく。

 

沈黙の声 オンデマンド (ペーパーバック)  ※Kindle版も出ている。
H・P・ブラヴァツキー (著)
ジェフ・クラーク (翻訳)
出版社: UTRYU PUBLISHING (2015/9/3)
ASIN: B0156B9RLU

https://www.amazon.co.jp/dp/B0156B9RLU

ジェフ・クラーク訳は、厳密で堅牢、アカデミックの薫りがする。初心者から高度な知識を求める者にまで対応できるだけの訳者解説、補注、用語解説が手厚く加えられているので、本格的な学習にはおすすめである。
読み始めてすぐに、この本が普通の本ではないことがわかった。すなわち、人生の後先のこともよくわからず、呑み込めず、腑に落ちないまま生きている普通の人間によって著された本ではないということが……

この先、あと幾生が待ち受けているかはわからないが、それらの人生を終え、遂に人間として完成されるときまで指針となってくれるであろうことを、静かな内面の輝きのうちに予感させてくれる本。えもいわれぬ格調の高さで、内奥から歓びをもたらしてくれる本だ。

1898年のブラヴァツキー夫人の序文によると、この本の内容は東洋の神秘学徒たちに与えられている本の一つである『金箴の書』から選び集めたものだという。

そして、『金箴の書』は『シークレット・ドクトリン』の基礎となっている『ジヤーンの書』のスタンザ(詩節)と同じ叢書の一部であるそうだ。確かに『沈黙の声』と『シークレット・ドクトリン』からは同じ薫りがする。この本は、難解な『シークレット・ドクトリン』を理解する助けともなるのではないだろうか。

訳者解説によると、パンチェン・ラマ9世は菩薩道の理想を正しく解説したものとして、また現在のダライ・ラマは初版百年記念に言葉を寄せて、この本を高く評価した。そして、この本は文化人たちからもたいへん評価されたとのことだ。

わたしは『沈黙の声』の存在を知りながら、長年読まずにいた。今は、この人生において、『沈黙の声』に出合えてよかったとしみじみ思う。出合いを可能としてくださった方々のご苦労に感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

マダムNの覚書,2016年5月22日 (日) 23:14